労働相談

 警備会社のNさん雇い止め問題

変形労働時間制の適用は無効と主張する中で画期的な解決

 Nさんは港区にある警備会社で夜勤を中心にして3年間働いてきましたが、会社側からいくつかのミスを理由に契約期間満了の雇止めを通告されました。

 相談があったのは22年12月末で、具体的に相談に乗ったのは23年1月でした。当初は雇止めという相談でしたが、具体的に聞くとこの警備会社は1カ月単位の変形労働時間制をとっていることが判明しました。本格的に変形労働時間制の事案を取組むのは組合でも初めてでした。

 「変形労働時間制」とは繁忙期と閑散期がある事業所が残業を出さないために、月単位あるいは年単位の労働時間の範囲内で平均して週40時間労働を守る制度です。

 しかし、この警備会社は毎月40時間から70時間の残業を前提としたシフトを組んでおり、典型的な違法・無効となるケースに該当していると考えました。

 そして、さらに聞いていくと就業開始30分前に出勤させてミーティングを行い、その時間外手当が未払いになっていることも判明しました。また、夜間休憩時間が2時間ありましたが、待機をさせられ、事実上労働時間に入る可能性も検討しました。

 団体交渉は第1回目を2月3日に行い、その後9月20日まで合計6回行われました。会社側の対応は変形労働時間制について、過去に労働基準監督署から指導を受けており、現在は適法であるとの姿勢を崩しませんでしたが、30分前の労働や有休分については当然支払う、解雇ではないが対応額は一定支払うなど譲歩もありました。

 この問題では、7月14日に宮本徹衆議院議員を通して厚労省労働基準局の係長からも変形労働時間制について意見を聞くとともに、7月16日には議員本人とも懇談を行い、変形労働時間制の問題点を伝え、国会での質問も求めました。

 このような取り組みの中、9月20日の最後の交渉で、企業側も変形労働時間制が違法な場合は未払い残業となることを認め、その分を含めて支払う事を検討することになりました。その後、何回かの事務折衝を行い、10月17日に回答書が届き、合意が成立しました。

 この件では、変形労働時間制の適用は無効と主張する中で、有期契約の雇止めの案件としては画期的ともいえる解決水準を勝ち取ることが出来ました。

 

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