労働局のあっせん調停で解決

団体交渉拒否の事業主を説得

 Aさんは、ハローワークでB保険代理店の「転勤無し」の求人を見て応募。雇用契約書にも転勤の記載はなく、ご本人も気にかけず入社。ところが入社5か月目に近隣の営業所への転勤命令を皮切りに、次々と転勤命令。就職1年後には5つ目の営業所勤務となりました。さらに、その2か月後、退職者の補充として翌月からの本社勤務を命じられました。

 そして本社異動を命じた1週間後に、本社勤務せずに1時間半以上離れた営業所の応援を命令されました。異動のたび「転勤か退職か」をちらつかされて、やむなく異動に応じ、新しい仕事に挑戦し、必死の努力で上司の信頼も得ていました。

 しかし、あまりに異常な短期での異動命令の連続にたまりかねたAさんが「考えさせてください」と考慮時間を要求したところ、即答を求められ、「断ることは勤務自体を辞退すること」「出社に及ばず」と強く迫られ退職に追い込まれた、という相談でした。

配転強要、退職強要の解決を要求

 組合では、会社の労働契約違反、違法な配転強要による事実上の退職強要である事から、団交を要求。Aさんが職場復帰を望まないことから、金銭解決を求めました。

 会社側は、求人票に「異動無し」とある点の非を認めましたが、異動は入社時に配布した就業規則に定めており、転勤はありうるとして次回以降の団交を拒否、裁判や労働審判など第三者の決定しか応じないとしました。

労働局のあっせん受け入れで解決

 組合は交渉での解決は困難と判断し、会社の意思を再確認したうえで、最も簡便でAさんにとって時間的・経済的負担が少ない東京労働局のあっせん申請を行う事を提案、あっせんを受け入れ1か月足らずでの解決となりました。

 金額的には不満も残りましたが、早期に解決した事と、会社が異常な異動命令について「申し訳なかった」と謝罪の意を述べたことで、Aさんも精神的に区切りをつける事ができました。