働く者の「労働法連続講座」第6回目
『解雇事件:普通解雇、懲戒解雇、整理解雇』
第6回は『解雇事件』がテーマ。CU三多摩の相談も多くが解雇事件です。講師は白神弁護士。
1、労働契約終了の種類
契約終了には解雇、雇止め、退職勧奨・強要、合意退職、辞職などがあるが、その対処方法は異なる。相談の際は、労働契約の中身を確認し、正確に把握することが重要。
2、辞職は自由
労働者からの一方的な解約・辞職は憲法22条及び18条により自由。退職の申し出は、文書を持って宣言すること。
①無期雇用契約=2週間の予告期間が必要。就業規則を確認する。
②有期雇用=1年以上の契約の場合、1年が過ぎれば退職は自由。しかし、やむを得ない理由、明示された労働条件が事実と異なる場合などは即時に解除可能。
3、退職勧奨・退職強要―応じる義務はない。
①退職勧奨=使用者側からの「お願い」の範疇。 きっぱり断る。内容証明やメールなどで退職の意思のないことを伝え、証拠を残す。
②退職強要=違法。パワハラに当たることも。 執拗な退職強要がある時は、面談の内容を録音、担当者の人数・言動、時間、部屋の広さなどをメモし、証拠として残す。差止の仮処分申請や損害賠償請求ができる。
4、解雇全般
労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とすると定めている。
①個別法に依る解雇制限
労働基準法は、業務上の休業中及びその後30日間・産前産後休業中及びその後の30日間(19条)、国籍や信条を理由とする解雇(3条)など、個別法令で解雇してはならないと定めているものが多数ある。これらの条文を駆使することも肝要。
②就業規則、労働協約の解雇条項の拘束力
就業規則などに記載された手続きを守らなかった解雇は一般的には無効。手続きがきちんとされているか確認が重要。
③解雇は30日前の予告義務-予告がない時は30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなくてはならない。
④相談を受けたら、〇本当に解雇ケースか確認〇すぐに解雇事由を特定する(使用者は解雇事由を記載して証明書を交付すべき)。〇組合で団体交渉を。〇法令違反、手続条項違反がないか確認〇解雇の撤回を求め、就労意思があることを文書で明らかにする。そして、始業時刻に出社する。〇退職金や解雇予告手当が振り込まれたら、返金・供託、以後発生する賃金の一部に充当すると内容証明で通知しておく。使用者側の原因で働けない時、労働者は賃金を受け取る権利を有する。
5、労働者側に解雇の理由があるとする時
①判断基準―〇客観的相当性(様々な措置を講じても改善されないか)。〇社会的相当性(労働者に苛酷すぎないか)があるか。
②労働能力を理由とする解雇は、ケースバイケースだが、教育訓練、配置転換など解雇を回避する努力がなされたか。
③私傷病を理由とする解雇―〇能力の欠如で復職困難(就業規則等に記載がある)。〇復職可能性(医師の診断書や意見が重要)。〇段階的な復職の可能性をさぐる。
6、有期雇用契約
①雇止めも解雇権濫用法理が適用されることがある。〇実質無期契約型〇期待保護型
②期間中の解雇は有効性がさらに厳格に判断される。
③同一使用者との間で、5年を超えて契約更新した場合は無期雇用への転換を申し込むことができ、使用者はこれを承諾したとみなされる。
7、労災
①業務を原因とする傷病には治療費・休業補償が支給される。申請に使用者の承諾は不要。
②認定基準がある。
③使用者の安全配慮義務違反での損害賠償請求も選択肢。
8、整理解雇
使用者側の経営事情等により、人員削減が必要になった時に労働者を解雇する。
①人員削減の必要性=収支・借入金の残高など、経営状況を基礎とする。
②解雇回避の努力(役員報酬カットや賃金カットなど)がなされたか。
③人選の合理性(選定基準を事前設定し、公正に適用等)があるか。
④説明協議義務(労働組合や労働者に時季・規模・方法、補償など説明し納得を得る)は果たしたか。
9、労働契約終了と社会保険、社会保障
①解雇の効力を争う場合は雇用保険法上の求職者給付の仮給付が受けられる。②健康保険の任意継続をすることができる。
10、組合の重要性
以上の講義の後、講師は労働組合について、勤務中の労働者の問題解決は、弁護士より労働組合の方が強いと指摘。労働組合は団体交渉権を持っている。交渉でパワハラ上司を異動させることができるのは組合。弁護士はできない。それなのに、組合の良さが伝わっていない。組合が大きくなって欲しいと期待を寄せ激励で講義をおわりました。
次回の講座 のご案内
テーマは「有期雇用契約、パート労働」
7月15日(土)、午後1時半~4時
北多摩西教育会館(CU三多摩事務所のある建物の3階)
新規参加も大歓迎です。直接会場へ。