『暮らしの困難と個人加盟労組の役割』

CU三多摩協議会2022年度第1回執行委員会は秋の拡大月間の準備として、労働相談を軸に組合を大きくするために、表記の学習会を行いました。講師は労働者教育協会の江口健志氏。以下その概要を掲載します。

≪世界的な物価高騰が日本経済を直撃した≫

 江口氏は、世界的な物価高騰が日本経済にも大きな影響を与えていると話を始めました。物価高騰の原因がエネルギー資源価格と食料資源の高騰にあること。その背景に途上国の経済発展と人口増加に伴う資源需要の高まりがあり、それが、「エネルギー資源小国」かつ「円安」というふたつのハンディを持つ日本経済に重く圧し掛かっていると指摘。

≪コロナ禍で生活が脅かされる日本の国民≫

 コロナ禍のこの数年、国民はさらなる困難に見舞われたと江口さんは指摘する。①医療崩壊②保健所の破たん③雇用不安、生活破壊④構造改革による雇用保障、社会保障の脆弱性が表面化し、生活がいっそう脅かされていると。

≪労組の組織形態の発達と基本的機能の展開≫

 次に、江口氏は労働組合の組織形態の変遷を19世紀のイギリスを中心に講義。①19世紀、職業別労働組合が自由放任の労働市場に投げ込まれた労働者の数を規制、またある賃金以下の現場では働かないなど労働市場を規制する方法を自ら獲得した。共済制度も作った。②1889年ロンドンで港湾労働者が日雇い労働者も含めた歴史的なストライキを打ち、企業や熟練か否かを問わず、産業・業種の枠を超えて誰でも入れる一般労働組合が出現。この中で、国家の労働政策、社会保養政策、社会政策などの制度的方法(失業保険、健康保険、老齢年金)も発展。③第二次産業革命の中、イギリスで、一般労働組合が組合員資格の門戸を次々に開き、産業別労働組合へ変わっていったと、その歴史を説明、さらに現在のアメリカの労働運動についても言及しました。

≪日本の労働運動の新たな芽  非正規組織化、最賃闘争の可能性≫

 終わりに江口氏は日本の労働組合、とりわけ個人加盟労組の重要性について言及しました。

 日本の労働組合運動は企業別組合が支配的であり、停滞局面を脱し得ていない。しかし、新たな芽があるとして、①非正規労働者がかつてなく増えてきた今、その組織化が課題であり、個人加盟ユニオン、ローカルユニオンの必要性が増してきた。そしてコミュニティユニオン三多摩協議会も生まれた。しかし、個人加盟ユニオンは課題もある。業種別、産業別の視点を持つことも必要であると結びました。

 そして、最低賃金1500円を目指す運動について、業種別春闘での賃金闘争だけではなく、ローカルユニオンの組織化の経験を活かし、『八時間働けば最低限人間らしく生活できる水準の賃金』を実現するために、全国的な運動として展開していることを評価した。そして、自民党政権は1500円にはしない。なぜなら大企業課税をしなければならないから。だからこそ、労働運動が必要なのだと結びました。

(文責・福田かづこ)