固定残業代の有効性について
固定残業代」の有効性について 「残業代を基本給に含め、区分が不明」 不当性を訴え交渉・和解
X社の総務を担当していたYさんは、会社の社員への手当の未支給など「ずさん」なやり方について、使用者に率直に意見を言い、正してきました。このようなYさんを疎ましく思ったX社は他社への出向辞令を出しました。Yさんは健康上の問題も抱えており、やむなくX社を退職しました。 Yさんは会社の嫌がらせを組合に相談 Yさんは、この間上司から嫌がらせを受けており、X社のやり方を組合に相談していました。退職に追い込まれたことを契機に、組合では、X社の賃金支払いに問題がないか検証した結果、以下の二点についてX社に請求することをYさんと確認しました。
1、X社は基本給に「残業代20時間分が含まれている」としているが、基本給と残業代の金額的区別が判然としない。
2、残業時間について、30分未満は切り捨てていること。 基本給に固定残業代を含める場合は、金額での区分を明確にしなければならないとする判例もあります。そうでないと、固定残業代は無効になり、すべてを基本給として計算することになります。
X社の場合、「基本給に20時間分の残業代を含める」としているものの、基本給と残業代20時間分の金額的区分がされておらず、無効となります。あらためて、実際の残業時間で計算した時間外手当を支払わなければなりません。また、30分未満の切り捨ては違法です。
X社はあくまで固定残業代未払い分の支払いを拒否
組合はX社と上記の2点を交渉議題に、団体交渉を申し入れ、X社は弁護士を代理人として、交渉が行われました。 争点は、基本給に含まれるとしていた固定残業代が支払われていたとみるか否かです。
組合は、固定残業代が基本給に含まれているというが、最高裁の判例などでは、金額で「区分を明確」にしなければならないとしており、X社のやり方は無効であると主張。
企業側は「本人が総務の仕事をしていたのだから含み残業代については納得していたはず」という主張やYさんが勝手に残業したなどの主張もありました。
また解決金の回答も組合の要求とはかけ離れたものであったため粘り強く事務折衝。組合はYさん本人が、在職中、総務の立場で社員の利益を守るために一貫して努力をしてきたことを具体的にあげ、X社のやりかたは、今後改められるべきだと主張しました。
Yさんと共に、粘り強く交渉を重ね、回答で前進し、「固定残業代で未払はない」と言っていた企業側と妥結しました。