CU三多摩第5回執行委員会での報告より
私たちを取り巻く情勢について
(1)岸田首相の訪米 安保大変質に踏み込む
訪米した岸田首相はバイデン米大統領と会談し、4月10日に「日米首脳共同声明」を発表。共同声明で、アメリカのバイデン大統領は 岸田政権が強行してきた敵基地攻撃能力の保有をはじめ、安全保障政策の大転換を称賛。今後も、米軍と自衛隊の統合など、軍拡・臨戦への政策を推進することが盛り込まれました。これはアジア太平洋地域の分断と軍事的緊張を激化させ、平和と安定を脅かすものです。
岸田政権は、安保3文書に基づき、陸・海・空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を24年度中に創設します。これは、米軍が進める対中国軍事戦略に、敵基地攻撃能力の保持や南西地域での態勢強化を図っている自衛隊を組み込むことです。平時から自衛隊が米軍の指揮下に置かれ、有事になれば動員される危険が加速します。
(2)衆院補欠選挙の結果について
一方国内では、自民党は「裏金問題」で国民の大きな批判にさらされ、内閣支持率は低迷したままです。
4月28日投開票の衆院3補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)で、自民党は敗北。岸田政権はさらに追い詰められています。
東京15区では市民と野党の共同候補で立憲民主党の酒井なつみ氏が日本維新の会や都民ファーストの候補に大差で勝利しました。「金で動く自民党の古い政治ときっぱり決別し、国民の声で動く政治を。企業・団体献金は禁止」など8項目で確認書を交わし共闘行動を加速させた結果です。
(3)23カ月連続実質賃金低下は過去最長 物価上昇に追いつかない賃金
厚生労働省が4月8日に発表した2月の毎月勤労統計調査では、物価の変動を反映させた実質賃金は、前年比1.3%減と23カ月連続のマイナスとなりました。これは、リーマン・ショック前後の2007年9月~2009年7月以来です。
(4)24春闘 中小企業の賃上げに厳しさ
連合の第4回集計(4/16)では加重平均1万5787円、5.20%(昨年比4765円増 +1.51㌽)、国民春闘・全労連の第5回集計(4/23)は、加重平均は7765円、2.46%(昨年比1695円増 +0.38㌽)の到達です。それぞれのナショナルセンター・共闘組織では、約30年振りの上昇を獲得しています。中小企業が多い国民春闘では、上積み回答への交渉継続をしている組合への支援体制を組んでいます。
財務省が発表(4/22)した調査によると、全国の中堅・中小企業の63.1%が24年度に基本給を底上げするベースアップ(ベア)を実施したことが分かりました。ベアがあった中堅・中小企業の割合は23年度の54.3%から8.8ポイント上昇し、人手不足や物価高を背景に賃上げの動きが中小企業にも広がっているとみられます。
しかし、ベア実施企業の割合は大企業の81.1%(23年度は77.9%)に比べ低く、働く人口の7割を占める中小企業の待遇改善はまだ不十分です。ベアと定期昇給と合わせて5%以上賃金を引き上げた企業は、大企業の53.8%、中堅・ 中小は24.4%です。人件費を価格に転嫁できていない中堅・中小企業は50.2%に上り、賃上げの原資確保に苦慮していることが原因です。
(5)雇用保険法が改正されます
政府の「経済財政運営と改革の基本方針(23 年6月 16 日閣議決定)」や「こども未来戦略方針(同年6月 13 日閣議決定)」に沿い、「リスキリングによる能力向上支援」や「成長分野への労働移動の円滑化」「多様な働き方の推進」「共働き・共育ての推進」が掲げられ、これに関連した雇用保険制度の改正案が国会で審議中です。
改正案のポイントは①雇用保険の適用が「1週間の所定労働時間20 時間以上」→「1週間の所定労働時間10 時間以上」〔2028年10月施行〕。②被保険者期間の算定基準を「賃金 の支払い基礎となった日数が11日以上」→「同6日以上」へ、③失業認定基準も「1日の労働時間が4時間未満の場合には失業日と認定」→ 「同2時間未満の場合には失業日と認定」に見直されます。
また、「自己都合退職の場合の給付制限の見直し〔2025年4月施行〕」「教育訓練給付の拡充〔2024年10月施行〕」「教育訓練中の生活を支えるための給付制度と融資制度の創設〔2025年10月施行〕」「育児休業給付の給付率引上げ〔2025 年4月施行〕」「育児時短就業給付の創設〔2025年4月施行〕」などの改正も予定されています。