一泊学習会での講演
講演『個人加盟労組・ローカルユニオンの未来について』
以下は、屋代 眞さん(全労連・新宿一般労組)の一泊学習会での講演の概要です。
講演冒頭、屋代さんは。「なぜ、個人加盟労組・ローカルユニオンが必要か」問いかけました。
日本の労働組合の多くが企業別・企業内組合であること。しかし、財界戦略によって非正規労働者が大半を占めるようになった今日、非正規労働者の加盟できる労働組合は少なく、ローカルユニオンしかその受け皿はないと解き明かしました。
そして、自身の新宿一般労組の結成への経過について、❶1995年の財界の21世紀戦略「新時代の日本的経営」の内容と狙いの分析を行ったことが経緯。❷この財界の21世紀戦略とどう闘うか、地域の労働組合の役割を検討した。❸1995年以後の春闘は低額回答が続き、低賃金構造が作られてきた。❹日本の労働組合の運動を振り返った。❺今後の春闘の立て直し、労働組合運動の道筋も検討。常に全体の情勢の変化をつかみながら、職場から運動を構築するスタイルを確立することが重要だと考えるに至ったと話されました。
「労働組合のオルガナイザーを育てよ」
労働運動の再構築には、❶情勢を見る目や理解する力を持った労働者を、職場の中にどれだけつくるかがカギ。❷そのために自主的学習、産別や地域の学習会に職場から積極的に参加させる。❸学んだことを実践へとつなげ、労働組合のオルガナイザーを作ることが肝要だと提起しました。
「新宿一般労組で目指したこと」
新宿一般労組は❶すべての労働者を視野に入れる。❷企業主義を克服すること。❸職場と社会に影響力を持つ労働組合を目指すこと。❹単なる未組織労働者の受け皿ではなく、企業内組合の企業主義克服を進める意識改革をもたらすものとするという理念のもとに結成されたと話されました。
「未組織労働者の組織化のカギは組織労働者」
これまで、地域労組が取り組んできたことの教訓が作り出せていないことの一つに、未組織労働者を組織化し定着させる組織者、オルガナイザー、世話焼き活動家を作ってきたかという問題に突き当たるとし、その解決のために、地域労連の加盟組合の執行部を対象に協力組合員制度を作った。それは労働組合の権利や力を知っている組織労働者が、未組織労働者を組織化する核になってもらうという考え方だった。
介護職をターゲットに組織化をし、職場分会を作り、労働組合の基礎講座を開き、新宿最賃アピールなど組合員の参加も募り、具体的な行動に参加を呼び掛けているそうです。
「日本の労働組合運動の再構築の課題は未組織労働者の組織化」
屋代さんは、講演の最後に「日本の労働組合運道再構築の課題は、未組織労働者の組織化」だとして、次のように結びました。
ここ数年の春闘が賃金の改善に繋がっているようにみえるが、労働者の切実な要求は全体として実現していない。要因は二つとして、❶政府の経済政策の失敗で、不況や規制緩和が相次ぎ、各企業の経営環境が良くなく、『支払い能力論』を強固にしていること。❷労働組合の組織率が低下し、労働組合の社会的影響力と職場内影響力が低下していることを上げています。
そして、社会の仕組みを変えることは容易ではないが、労働組合の組織拡大強化は労働組合の課題で、労働組合が本気でその課題に挑戦するならなしえない課題ではないと結ばれました。
参考 財界の21世紀戦略
「新時代の日本の経営」とは、高コスト体質となっている日本経済を如何に是正するかとして、❶年功序列と終身雇用制度を突き崩す
❷有期雇用を当たり前にする。❸雇用が流動化❹低賃金労働者が大半に❺社会保険制度の企業の負担率を減らす。
今も、財界は政府の尻を叩いて、残業規制の緩和など労働法制の抜本的見直しが図られようしています。これを許
さない運動が必要です。