『実質賃金長期大幅下落の背景と労働組合運動』

都留文科大学名誉教授 後藤道夫氏講演

 新春のつどいに先 立ち、三多摩地本の第3回執行委員会が開催され、冒頭、労働組合の今後について、都留文科大学名誉教授の後藤道夫氏が『実質賃金長期大幅下落の背景と労働組合運動』と題して講演を行いました。以下要旨を掲載 します。

1、なぜ実質賃金は低下した?

2024春闘で大企業の賃金が上がった。しかし、 大元の賃金は上がっていない。実質賃金低迷の 原因はどこにあるか。
① パート労働を推進する労働管理構造にある
毎年最低賃金が上がるが労働構造が、パート 就労激増で賃金が上がらない構造となっている。
給与の統計では、1997年を100としたとき、 パートの給与は2023年で101.3%へと微増だが、 フルタイムの給与総額は94. 7%に減っている。
フルタイム労働より、パート労働の比率が高く、賃金が上がらない構造に。
② 男女の賃金格差が解消されない
女性労働が、家計収入の不足を補う働き方に シフトさせられてきた結果、賃金格差も縮まらず、全体の賃金の低さが改善されてこなかった。
③ 労働運動の低迷も原因
戦後賃金闘争はストライキも含めて闘われて きた。しかし、1974年350万人が参加したストライキは2022年度には1000人に満たない。
中曽根臨調行革以後保守が強くなり、資本独 裁の状況が続き、労働運動を押さえつけてきた。 これに鉄鋼労連や自動車労連など大手の労働組合が屈服。
さらに、非正規雇用がふえ、労働組合への組織 率も低迷してきた。賃金闘争で、ストライキもな く、徹底して闘う労働組合がないことが賃金が 上がらない構造を許している。
④ 最低賃金とは何か
最低賃金は、人ひとりが普通に生活し、働き続けられる賃金水準であるべき。労働運動が最低 賃金10 0 0円を求めてきたことは重要である。 しかし、今それでは暮らせない。15 0 0円を求 め運動があるが日本全国一律最賃も重要な労働 運動の課題である。

一回転ドアにも意義があるー

講演の最後に、後藤先生は私たちの組合の抱える悩み、困難が解決したら組合を脱退する『回転ドア』状況について、各労働組合で戦略が必要だが、「意味はある」と話されました。
団体交渉をして最もいいのは「職場に残るこ と」、次に職場は退職しても「組合には残る」こ と。つまり、つながりは残るということは決して 無駄ではないと力説。
そして、今労働者が置かれている困難の原因がどこにあるのか、どうしたら変えられるのかなど、若者たちが社会問題として学び、行動することで社会化でき、同じ困難を抱える人たちが 集まり、繋がってくることも可能になると、希望も話してくれました。
労働運動の新しい担い手は、労働組合の経験 者だけではない。アルバイトで働く大学生や大 学院生たちが自分の職場で賃金引き上げの闘い を始めている。そこに労働運動の新しい担い手を求めることも必要ではないかとの提言もありました。