働く者のための「労働法連続講座」第七回
『有期雇用契約・パート労働』
7月15日の第七回講座のテーマは有期雇用契約とパート労働です。講師はCU三多摩協議会の顧問弁護士塚本和也氏。
塚本弁護士は冒頭「この範囲を学ぶ意義は、今。労働者全体の4割に達する非正規労働者の相談に対応できる。」と話されました。以下要約です。
1、有期雇用契約
①有期労働契約に対する法規制
2018年のパート法改正で『パート有期法』が成立。有期雇用労働者に対しても㋑労働条件の明示義務㋺事業主が講じる措置の説明義務の強化が課された。
②雇止め(更新拒絶)にも厳しい法理適用
解雇権濫用法理と同様の法理が適用されることがある(労契法19条)。契約期間途中の解雇は 期間の定めのない契約における解雇に比べ、解雇の有効性が厳格に判断される。(労契法17条1項)
③有期雇用契約の5年で無期雇用転換
有期雇用労働者は同一の使用者との間で、5年を超えて契約を更新した場合は、無期労働契約への転換を申し込むことができ、使用者はこれを承諾したものとみなされる。
④2018年、パート法のパート有期法への改正により、同法が有期雇用労働者にも適用されるようになった。
しかし、公務員の勤務関係は、公法上の任用関係であると解されていることから、裁判例では民間労働者に関する雇止め法理の適用が否定されている。ただし期待権侵害による損害賠償請求が認められる可能性はある。
自治体に働く、会計年度任用職員制度の創設に伴う地方自治法の改正は、同職員に対して支給可能な手当の種類が明示された。今後は改正法を生かした均等・均衡待遇を求める取り組みが重要。
2、パート労働者に関する相談
パート労働者にも労基法等の労働者保護法規が適用される。2018年にパート法がパート有期法に改正された。通常の労働者との均等・近郊待遇に関する規定が整備された。
①労働条件の決定・明治・説明に関するルール
㋑雇用条件明示義務
㋺就業規則作成・変更に関する手続
㋩事業主が講ずる措置の内容等に関する説明
義務
②処遇改善に関するルールの整備(後の項目で)
③通常の労働者への転換を推進する。
㋑通常の労働者の募集に際し、短時間・有期雇
用労働者に周知する。
㋺人員配置を新たに行う際、それへの希望を申し出る機会を与えること。
㋩有資格労働者に対し、通常の労働者への試験制度を設けること。
④以上の実行確保のための体制を備えること。
3、派遣の労働に関する相談
派遣労働者についても、2018年の派遣法改正により派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を定める規定が設けられた。
①派遣労働では、指揮命令をする企業と雇用関係にある企業が異なる。
派遣労働とは、労働者が派遣元と雇用契約を結び、派遣元と派遣先との労働者派遣契約に基づいて派遣され、派遣先の指揮命令で働く制度。
②契約上の責任の所在は?
賃金、労働時間、労働災害については、労基法、労災保険法が適用され、派遣元が責任を負う。社会保険の加入も派遣元の責任。
③派遣先の責任に負うのは同一労働同一賃金
㋑不合理な待遇格差をなくす規定の整備
㋺派遣労働者の待遇に関する説明義務
㋩裁判以外の紛争に関する規定の整備
④派遣の終了
㋑派遣労働契約継続中の解雇=派遣契約の終了を理由とした解雇は無効。
㋺派遣労働契約の雇止め=派遣労働契約は有期であり、雇止めには労働契約法19条が適用される。
⑤派遣切りに対する、派遣元、派遣先への請求
㋑派遣元には雇用安定措置義務がある。
㋺派遣先には違法派遣や偽装請負がある場合、直接雇用請求ができる場合がある。また、損害賠償請求も考えられる。
⑥労働契約の申込み見做し制度
派遣期間制限違反、偽装請負等の派遣法違反があった場合に、労働者派遣を受け入れた派遣先に対し、直接雇用を義務付ける労働契約申し込みみなし制度がある。
⑦派遣労働者の団体交渉権
㋑派遣元との交渉=派遣労働者の労働条件に付いて、労働者の所属する労働組合と団体交渉に応じる義務がある。
㋺派遣先との交渉=一定の場合に団体交渉権を有すると解されている。また、労働契約見做し制度が適用される場合、労働者の所属する組合が直接雇用の労働条件に付いて交渉を求めた場合、団交の応諾義務を負うと考えられる。
なお、派遣期間には、事業所単位の期間制限(原則3年)と労働者個人単位の期間制限(3年)がある。
4、非正規労働者の均等・均衡処遇に関する相談
①不合理な待遇の相違の禁止=基本給、賞与の差別禁止が明記された。
②差別的扱いの禁止=事業主は賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等の待遇の差別禁止。
◆詳細は、テキストに使っている日本労働弁護団編著の『労働相談実践マニュアル』(1冊5,500円)です。パート労働や有期労働、派遣労働者の権利などについても詳細に掲載しています。テキストの欲しい方は組合事務所までご連絡ください。
□次回の講座
テーマは「障がい者雇用、高齢者雇用」
8月19日(土)、午後1時半~4時
北多摩西教育会館(CU三多摩事務所3階)
お忘れなく。新規参加の方も大歓迎です。
事務所にお電話ください。