一、2019年度の運動の経過

(一)駆け込み寺の役割果たす労働相談活動

1、労働相談の内容と事例

 昨年度の労働相談は全都14支部で365件(19年4月~20年3月)です。三多摩協議会は31件(19年7月~20年6月)でした。

 相談の内容は、解雇・雇止めなど雇用問題が10件、残業代未払いが5件、有給休暇など労働条件関係が3件、パワハラなどの問題が5件、コロナ感染の倒産解雇が3件(4人)、退職に伴うトラブルが5件、不当処分・雇用継続などが5件となっています。(理由は重複あり)

 

 相談者の年齢を見ると20代:4人、30代:5人、40代:5人、50代:9人、60代:4人、70代:4人、不明:2人となっています。昨年度は年代別にはほぼ均等になっています。

 相談の結果や経過は、次の通りです。

□団交‣申入れによる解決件数:9件

  □相談によって解決した件数 :4件 

  □相談・交渉後に弁護士紹介 :2件 

  □相談のみの件数      :2件 

  □継続中の件数       :8件 

  □本人都合で中止の件数   :5件 

 いくつかの特徴的な事例をみると

①固定残業代での未払い残業代事件

 介護施設で総務関係の仕事をしていたUさんは、22万円の給与に20時間の残業代を含む固定残業代となっていましたが、固定残業代の要件を満たしていないとの主張を行いました。相手側弁護士との交渉では、こちらが出した判例について固定残業代を否定したものではなく、固定残業代は争いがあるとの主張でしたが、労働審判で争う気はないとのことであり団体交渉で解決しました。

 固定残業代での争いは基本的に有利な争点ですが、相手に提示する判例は十分検討する必要性があった事案です。

 

②試用期間中と試用期間終了後の2件の解雇事件

 試用期間終了後と試用期間中の解雇事件でしたが、当然共に正規雇用であり正当な解雇理由が必要であり、不当解雇を争いました。1件は試用期間中の出勤が少なかった事案でしたが、会社側の指導や教育がなかったことから不当解雇の主張を行いました。試用期間は「解雇権留保付労働契約」ですが、社会通念上相当と認められる理由が必要です。2件に共通するのは試用期間であっても解雇に相当する社会通念上相当の理由がない点でした。

 

③新型コロナ感染のための倒産による解雇

 新型コロナの関係で2つの事案を現在扱っています。1件は民事再生ですが実態として倒産時といえるもので、事業譲渡で労働債権の支払いは出来そうですが、職場復帰は難しい状況です。もう1件は指名解雇事件で新型コロナの関連であっても不当解雇であることは明らかなので今後解雇に相当する要求を行います。

2、労働相談の前進と教訓

(1)具体的な相談結果と対応力の強化

 相談者の組合加入状況は16件で17人でした。組合員の相談が8件あったので加入に至らなかったのは7件(8人)で、中にはいったんは加入の意思を示し団体交渉まで至ったものが中止になった事案もありました。

 相談対応者の対応力の引き上げの努力を昨年度も取り組んできました。主には執行委員会を利用した組織内講師によるもので「公務労働の問題」「パートタイム労働法・有期労働法(同一労働同一賃金)」などを行い、「国保問題など」も学習しました。また、相談対応は複数体制を引き続き行い、常に1案件に対し3~4人体制で対応してきました。そして、事案ごとの責任者も引き続き決めて取り組み、対応者間と当事者の意思統一が十分図れるようにしてきました。

 昨年度の4月頃から新型コロナ感染関連の労働相談が来るようになり、その中心は解雇事案です。その中で「雇用調整助成金」制度を活用させることで解雇撤回をめざした案件などにも取り組んでいます。今後もコロナ禍での相談は続く可能性が高く取り組みを強めます。

 

(2)八王子合同法律事務所・白根弁護士と協力した相談対応

 すべての相談事案は事務局会議で全体のものにすると同時に、白根弁護士からの助言を受けています。私たちが取り組む労働相談はある面で白根弁護士と八王子合同の協力が団体交渉に臨む際の確信をつくり支えているとも言えます。

 そして、個別の相談対応の会議や協議にも直接参加してもらうこともあり、相談者にとって弁護士から直接回答を受けることが出来、対応の円滑化をつくることも出来ています。労働審判や本訴を視野入れた場合、弁護士との協力は絶対的に必要なものになります。しかし、その場合の損得を弁護士から具体的に知らせることも重要であり、組合の交渉によって解決する事が何よりも本人にとって有効・有利であることを知ってもらう上でも、大きな役割果たしています。

 引き続き八王子合同法律事務所と白根弁護士との協力関係を強めて行きます。

 

(3)交流の集いと事務所当番などの充実

 昨年度は争議報告集会を開きませんでしたが、昨年の定期大会や今年の新春のつどいでは労働相談者から争議の現状や結果の報告を聞き、CU三多摩が労働相談で大きな役割を果たしていることに対し参加者の確信をつくりました。

 毎週水曜日と金曜日の組合事務所の当番は定着しています。事務所を開けているときの相談はあまり多くありませんが、それをカバーする組合の携帯電話はそれなりに活用されています。携帯電話は昨年途中まで2週間単位の持ち回りでしたが、一定の相談の継続性の関係と次の担当者へ渡すことがスムースに出来ないことから、一ヵ月単位で事務局会議から事務局会議までと変更しました。相談体制は12人(白根弁護士を加えると13人)が継続していて経験を蓄積していますが、新たな相談員づくりが課題になっています。この点では新たな相談員を迎える呼びかけも行っています。

 

(4)誰でも相談出来るためのホームページ・宣伝の強化の取り組み

 ホームページもCU三多摩独自で開設しています。昨年度はホームページからの相談は1名でしたが、CU三多摩ニュースについては毎月最新ニュースを掲載しています。しかし、それ以外の掲載内容が古い点もあり、定期的に更新して最新情報を載せるようにしなければなりません。全都では相談経路の第1位は組合員、それに次いで多いのはホームページなどのネット関連で365件中49件となっています。

 定期的な駅頭宣伝を西武線は東大和市駅、玉川上水駅、清瀬駅、京王線は多摩センター駅を中心に毎月取り組んできました。そして、立川駅でも最賃宣伝を行いました。4月からは新型コロナ感染が広がった関係で中断していましたが、7月末から徐々に再開する予定です。

 宣伝内容は組合の労働相談の実績や一人でも加入できる組合を訴え、CU三多摩をアピールしてきました。

 

(5)労働相談の教訓と課題

 労働相談の取り組みでの課題では、相談体制の問題では引き続く課題ですが、相談件数を均等に相談員が分担することです。負担を一部の相談員にかけることの無いように相談員間で十分に協議する必要があります。

 また、昨年から事案毎に相談員チームの責任者を決めていますが、それぞれ相談者本人との連絡や相手側への連絡の分担を決めるなどそれなりに機能しています。

 相談者側の課題も引き続くもので、なにより組合まかせにさせない点が上げられます。最初の相談の時点で一定程度は「主体は本人だ」という事はつたえますが、そのことを理解していないケースもあって相談が中止になったものも出ています。ある相談では、本人は帰省し全くノータッチで、その状況で本人と連絡を取りながら交渉を進め、相当額の回答を得たにもかかわらず、勝手な動きをして最終的に中止になった事案、交渉を継続している状況にもかかわらず独自で組合を除外して交渉を別に行い中止になった事案などがあります。また、争議が長期化すると不満がたまり、早期に解決しないのは組合側に原因があるとの主張する局面も出ています。

 争議の主体は相談者本人であり、組合の立場は協力と援助が基本であることの認識を相談者に伝える努力を引き続き行います。

 そして、何よりも相談数を更に増やすことを追求します。

 

(二)組合員の結びつき強化の取り組み

1、機関紙活動の強化と全組合員へ郵送

 CU東京は組合員間の横のつながりをつくる定期的な会議がないことから連帯感をつくることが難しい面があります。そのような状況で組合と組合員を結ぶ重要な役割を果たしているのが機関紙活動です。

 機関紙「CU三多摩ニュース」は毎月定期発行を行い、本部機関紙とセットで組合員本人へ毎月郵送しています。紙面の内容についても必ず労働相談の解決事案や取り組み途中の事案を載せるようにしています。そして、事務局会議で内容について協議し内容の充実に努めています。

 同時に、様々なイベントの独自の案内チラシなども同封して参加を呼び掛けています。

 

2、定期的な組合員交流と地域イベントへの協力

 組合員同士の交流の取り組みも重視して取り組んできました。昨年度は定期大会後の懇親会、秋の拡大決起集会を兼ねたバーベキュー大会、1月の恒例の新春のつどい、そして今回はコロナ感染の関係で直前に中止になりましたが3月末のお花見と取り組んできました。

 2020新春のつどいは47人の参加でコーラスの「三鷹カッコー」を含むと55人の参加でした。課題の労働相談者の参加は1名の参加でしたが、発言内容は組合への確信をつくる良いものでした。その面では昨年の第5回大会では8人の労働相談者の発言があり大会を大きく盛り上げました。

 地域イベントでは小金井平和盆踊りと清瀬平和と健康まつりを取り組みました。清瀬の祭りは雨で縮小されましたが、小金井平和盆踊りはビールとラムネを完売し2日間とも祭り成功に貢献しました。また10月には小金井公園で拡大バーベキュー交流会も行いました。前進座の公演も取り組みました。残念ながら今年春の公演は新型コロナ感染の為中止になりましたが、昨年度秋の公演「鼠小僧次郎吉」を鑑賞しました。

 

(三)CU東京1500人と三多摩300人をめす拡大の取り組み

1、CU東京1406人への前進と三多摩協議会282人の到達

 この1年間の拡大運動でCU東京は1350人から1406人へ前進しました。1500人を目指した年でしたが、春はコロナ感染の関係で拡大月間を中止しました。しかし、新型コロナによる労働相談の増加で文京支部19人、江東15人、品川13人などの支部で2ケタの増加となり前進をつくりました。

 三多摩では300人突破を目指し取り組んできましたが、昨年度秋の月間は27人の目標に対し19人の拡大、今年春の月間はコロナ感染症の広がりで中止になったこともあり10人の拡大でした。月間外での若干の加入もあり、昨年度の拡大は32人の拡大でした。また、脱退も多く29人でした。その結果300人の組織実現はできず282人(2020年7月1日現在)の組織数でした。

 昨年秋には、東京土建の調布、府中国立、村山大和、日野支部へ要請訪問を行い、村山大和と府中では直接役員会で訴えも行いました。また、小金井国分寺支部では組合員の娘さんの労働相談を取り組んだことを受けて、書記局が支部役員に加入を強く訴える行動も生まれました。

このような取り組みからいくつか教訓も生まれました。東京土建への拡大要請行動は会議の席では、論議が生まれない為成果には結び付きにくいこと。拡大月間の行動とは別に、定期大会後の一定の時期には役員の入れ替わりを受けて書記局・支部に加入の働きかけを行うことが年々重要になっています。同時に、東京土建OBのCU三多摩役員と東京土建書記局の結びつきや関係が徐々に薄くなってきていることから、労働相談などを通じたパイプを作る必要があります。

そして、CU東京の組織は、多くの先輩組合の協力と支援なしには前進できない点と私たちの組合の果たす役割が現在の労働環境の中で求められている点に確信をもって加入を訴えることが重要です。

 昨年度の加入者は東京土建関係が大きく減少し4人(前年16人)、議員政党関係5人(前年6人)、労働相談16人(前年18人)などが中心でした。拡大総数が44人から32人に減少したこと、脱退者数が20人から29人に増加した点も組織の前進をつくれなかった要因になっています。

 新年度こそ三多摩500人を展望できるように、350人の組織実現を目指します。

 

2、組織を強化する取り組み

(1)執行委員会と事務局の強化

 昨年度は24人の執行委員体制(前年度23人)と12人の事務局体制で運営してきました。執行委員会は隔月に日曜開催で、現役の役員の参加を保障しながら、事務局会議は毎月定例開催し、白根弁護士にも出席してもらい労働相談の課題を全体のものにしてきました。

 執行委員と事務局の拡充については、要請を強めてきた結果、執行委員会は1人増えた24人体制(1人減少2人増加)となりました。しかし、事務局体制は増加を実現できませんでした。引き続き要請を強めて、拡充をします。

 執行委員会強化の点では、学習会の取り組みによって質の強化を行っています。執行委員会では、労働問題を中心に会議の前半で学習会を実施してきました。

 また、女性の執行委員を増やすことが求められていて、現状の男性21名女性3人から女性執行委員を増やすように取り組んできました。

 

(2)多摩稲城、清瀬東久留米分会の前進

 17年3月に多摩稲城分会、18年2月に清瀬東久留米分会が設立されています。現在多摩稲城分会は約50人、清瀬東久留米分会は40人程の組織数となっています。毎年の定期総会も開催され、コロナ感染で現在は休んでいますが、2月までは定期的な駅頭宣伝を清瀬東久留米分会は清瀬駅、多摩稲城分会は多摩センター駅を中心に取り組んできました。

 特に多摩稲城分会主催のシンポジウム「障がい者の権利条約と障がい者が働くこと」は34人の参加で成功させることが出来ました。シンポジストには「障がい者と家族の生活と権利を守る都民連絡会」の市橋博さんをはじめ当事者の間島執行委員をはじめ、小野塚副委員長、安斉市議会議員が務め、障がい者が働くことについて学習と交流が出来ました。

 分会づくりは、地域に影響力を持ち、地域との協力関係をつくるうえで重要な意義を持ちます。また、分会づくりは活動する組合員を増やす役割も持っています。引き続き、様々な地域での分会づくりに取り組む必要があります。

 

(四)いのちと暮らしを守る運動

1、いのちと平和を守る諸行動

 昨年度も平和・いのちと暮らしを守る運動に取り組んできました。昨年度は10月の「横田基地はいらない集会」、11月の「オスプレイ大集会」や、改憲発議に反対する署名に取り組むなど、憲法9条改悪阻止、米軍基地撤去・辺野古基地反対などの平和を守る運動を進めてきました。

新型コロナ感染のため5月の憲法集会をはじめ多くの取り組みが見送られましたが、戦争する国づくりに反対し、市民と野党の共闘に協力することを通じて政治を変える運動にも取り組んできました。

 

2、三多摩労連・春闘共闘に参加

 昨年度も三多摩労連や三多摩春闘共闘の運動に参加をしてきました。2月の春闘総決起集会にも積極的に参加しましたが、春以降は新型コロナ感染のため、メーデーの集会などはできませんでした。しかし、三多摩労連からは労働相談などの紹介もあり、引き続き協力・協同の関係を深めます。

 

(五)女性役員・活動家の奮闘と課題

 非正規雇用が多数を占める女性労働者の組織化を目指し、労働相談も半数は女性であり女性活動家の育成が求められています。その中で女性の相談員や執行委員としての奮闘が生まれています。また昨年度の東京母親大会はコロナ禍で中止になりましたが、引き続き協力をしました。また、女性の執行委員選出の呼び掛けも行ってきました。

 

(六)組合員をサポートする共済活動

 CU東京の共済制度は入院共済が中心になっていますが、慶弔共済や組合活動事故見舞金などの制度もあります。入院共済制度は交通事故以外のけがや病気での入院に対して、最大60日・30万円が給付されるもので過去の病歴を問う事もない分かりやすい制度です。

 2019年度の給付は39人(前年度29人)、合計給付日数799日(前年度567日)の給付がありました。また、結婚祝金6件(前年12件)、死亡弔慰金4件(前年1件)も給付されています。

 東京労働共済会の自転車共済などの普及も進めました。また、ディズニーリゾートの利用券は62枚の利用でした。

 

二、2019年度の課題と方針

(一)はじめに・情勢

 昨年12月以降、顕在化した新型コロナウイルスの災禍は、現代世界の抱える様々な矛盾・弱点を一層際立たせています。

 混乱の初期には、アメリカをはじめ多くの先進国政府は、自国第一主義的な対応を取り感染拡大を有効に阻止できませんでした。科学的な対応や市民に対する情報の提供を誤り、多くの犠牲者を出し続けています。

日本でも、“アベノマスク”に代表される、政権の場当たり的な対応から始まる混乱は、政権と自治体との連携をも欠く中で、今も続いています。

一連の混乱の中で、80年代から進められてきた「臨調行革」路線、利潤追求第一の「新自由主義」の弊害が全面的に露呈しました。

混乱の中にあってさえ、米中ロなどの大国は、核軍拡路線に固執し、対米従属の日本の政権は、何ら有効な役割も果たせずに右往左往しています。

先般の「新・生存権裁判」名古屋地裁不当判決をはじめとして、年金削減・医療負担値上げ等々、国民生活への大きな打撃が積み重なっています。“コロナ禍”における雇用状態の悪化の中でも、最低賃金引き上げの見送りも決められ、非正規雇用労働者・零細企業・小売業・一人親家庭等々の生活は益々追い詰められています。

今、求められているのは、「新しい生活」様式への転換(自己責任と共助)ではなく、「新しい政治・新しい経済・新しい社会」の構築です。日本国憲法に歌われた、平和主義・基本的人権の尊重・国民主権の大原則を守り、議会制民主主義を確立した新しい日本をつくる事です。

CU三多摩にも、深刻な相談が多数寄せられ、生活の困難さはますます実感されます。一つひとつの課題の解決に向けて、これまで以上に団結して奮闘しましょう。

 

(二)課題と方針

1、CU東京の前進した要因

 CU東京は本年7月の12回定期大会を1406人で迎えています。(結成時2009年6月、57人)この到達はCU東京の活動が社会的評価を拡げ、未組織労働者の信頼を築いてきたことを示しています。この前進の要因を昨年の大会でも次のように確認しています。

第1に、駆け込み寺と誰でも入れる労働組合を基本姿勢にして活動したこと。

第2に、CU東京を支援する協力組合や労働者の善意(連帯)が、この運動を支えたこと。

第3に、CU東京の役割が認知され、各議員や民主団体の理解と協力が広がったこと。

第4に、独自の組織活動や共済活動を重視したこと。「拡大月間」を設けた組織拡大、機関の確立、相談体制確立、自主共済の拡充に取り組み、力量を高めたこと。以上の点を成長の4要因としました。

 

2、運動の基調と重点

(1)CU東京三多摩の運動の基調(基本姿勢)

 労働運動は個別労使紛争が多発し、非正規雇用が4割に達するなどの「雇用の劣化」が進み、「コロナパンデミックス」によって深刻化した「雇用の危機」に直面しています。この時期こそ、「個人の尊厳」を守り「個別労使紛争」を正面から受け止め、労働組合への団結(加入)を呼び掛けるCU東京の強化が求められています。

 CU東京の運動路線は、憲法(27条・労働基準を定める。28条・労働3権)と労働法規を生かし、日本の労働組合の「企業主義の弱点」を自覚して、次の4点を確認しています。

①「労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)」を通じて、個人の尊厳を守る「駆け込み寺」の活動

②労働運動の連帯と誰でも入れる組織によって地域運動を推進する

③中小企業家との共同・連携、地域経済と雇用を守る

④市民と野党の共闘で「政治と社会を変える運動」との連帯

 CU三多摩は以上を運動の基調に据えて本年度も取り組みを進めます。

 

(2)運動の重点

 安倍自公政権の1%の富裕層と大企業のための新自由主義の政治と社会は労働者の雇用を破壊してきました。今、コロナ危機の中「破たんした新自由主義の政治」から「99%の国民のための政治」への転換が強く求められています。

 CU東京は「働くルールの確立」「セーフティーネットの確立」などの要求を運動の重点にして、次の課題を掲げて活動します。

①8時間働けばふつうに暮らせる社会の実現。

・大企業の内部留保487兆円、大資産家の資産増加への課税と社会への還元。

・全国一律最低賃金の確立と時給1500円の早期実現。

②医療・介護・年金・福祉・失業などのセーフティーネットの確立。

③グローバル化の是正と地域産業の育成

 

3、平和・いのちと暮らしを守るたたかいの前進

(1)コロナ禍で問われる社会の在り方と行き詰まり社会

 経済活動を市場原理に任せ、資本の利潤追求を最大化させ、あらゆるものを民営化していった新自由主義は、今回のコロナパンデミックスによって破たんが明らかになっています。

 日本政府の進めてきた新自由主義による「構造改革」は雇用、医療制度、福祉、社会保障などの社会的セーフティーネットを大幅に縮小・削減してきました。この政策が日本のコロナ危機に対応できない社会を作り出しています。

 ポストコロナ社会での打開方向は、①食糧、エネルギー、医療・介護・社会保障などの自給を基礎にした社会から、生活条件優位の社会への転換を求めること。②グローバル化した資本主義の大幅な修正が求められています。生産拠点を賃金の安い国に移すことや海外市場をメイン化した企業の弱点が表面化し、必要なものを調達できないという脆弱性を露呈しました。「必要なものは国内で調達でき、国内市場で商品がさばける」内向き企業が危機に強いことを明確にしました。各国は「自給自足」体制への移行を模索し始めています。この打開方向を共有化する必要があります。

 CU東京は前大会でも「『非正規雇用が当たり前の時代』という社会は、人間らしい雇用と労働が破壊され、労働者の未来に展望を示せないことを確認し、このような日本社会の行き詰まり打開」を運動目標にしています。今回のコロナ禍は、新自由主義社会の破たんを明確にしました。

 この行き詰まりを打開する年にする上で「大企業の横暴に対する規制」「働くルールの確立」が焦眉の課題になっています。

 

(2)憲法の実現は労働組合の課題

 日本国憲法は個人の尊厳や男女平等、国民の生存権などの社会政策を国に求めています。27条では労働条件の必要性を示し、28条で労働者の団結権などを明らかにしています。この憲法の条文は「ポストコロナ」社会の在り方を示しています。

 コロナ禍とグローバル化した資本主義から労働者・国民のいのちと暮らしを守るには憲法の理念の実現が必要です。とりわけコロナ禍でも年間40兆円を増やした大企業の内部留保に対する課税と労働者・中小企業への還元と全国一律1500円の最賃制の実現など働くルールの確立が強く求められます。

 そして、「1日8時間働けば暮らせる社会」を求めます。労働組合として多くの市民と連帯し地域と社会を変える運動を、引き続き「市民と野党の共闘」などの活動に参加しながら、国政と地方政治転換の運動に取り組みます。

 

4、労働相談と組織拡大を柱に、CU東京3000・三多摩500を目指す

(1)労働相談活動の強化

 非正規雇用が社会標準化し、労使関係が変化する中で個別労使紛争に正面から臨んでいるCU東京の活動は、過去の「集団的労使紛争」から現在の「個別労使紛争の形態」へ変わる中で、これまでの労働運動とは違う新しい運動形態といえます。

 個別労使紛争の件数は平成30年では111万7983件(前年比1.2%増)となっています。これは11年連続で100万件を超える状況で、その中でも個別労働紛争相談件数(具体的に争議になったもので労働局が関与したもの)は26万6535件と前年比5.3%増で過去最高となっています。これは労働局が集計したものでそれ以外のものは含まれていません。今の労働情勢はまさしく我々の出番といえます。

 そのための労働相談体制の確立をさらに進めることが強く求められています。しかし、現状の相談員は様々な事情を持ちながらボランティアで務めていることから矛盾も生じているのが現状です。

 当面、相談員数を現状の12人から少しでも増やし、負担の軽減を図ることを目指します。同時に昨年度女性の相談者数は16人(総数33人)とほぼ半数を占めており、女性の相談員を増やすために奮闘します。

 また、相談員の若返りが重要な課題になっています。相談活動は、現在60歳代後半から70歳代前半の役員が担っており、将来へ向けて活動を継続して行くためにも、若い世代の相談員の確保・育成に力を注ぎます。

 

(2)CU東京3000と三多摩500組織の実現

1)CU東京(地域ユニオン)の役割

 CU東京は現在1400人の組織数ですが、全労連のローカルユニオンは134組合で約1万1千人といわれています。CU東京3000人の実現は全国最大のローカルユニオンを実現することで、三多摩500人の実現はその支えになると同時に、CU三多摩の専従者配置などの実現を展望する組織数でもあります。

 3000人組織を目指す運動は、①コロナ禍で深刻化する雇用危機で困難を抱える労働者への対応を強化する活動です。②CU東京3000人と三多摩500人は地域からの信頼と頼りになる組合としての評価を定着させる活動です。③労働組合OBや支援者の結集、労働者の拡大はCU東京のローカルセンターとしての役割を強化し、地域の労働運動の推進力を作ります。

 

2)当面の目標CU東京1500人と三多摩協議会350人を目指す

 今年度の当面の組織拡大目標を昨年コロナ禍で到達できなかったCU三多摩350人組織を実現することとし、その達成のために全力を上げます。そしてCU東京年内1500人組織実現をめざす運動につなげます。

 350人の組織到達は地域や他労組の中でさらに存在感を高め、期待や影響を強めます。そのために支援・協力を受けている各労組・団体への働き掛けを積極的に行います。そして、CU三多摩でも学習決起集会などを計画して拡大運動の意思統一をはかります。

 また、昨年から開催された一泊のCU東京活動者会議にも積極的に参加し、学習と交流を深めます。

 

3)地域の労働組合や民主団体などとの懇談と地域に根差した活動

 地域の民主団体や労働組合との懇談を取り組みます。昨年も三鷹共産党市議団と懇談を行いました。そして、組合との協力関係を築くことを確認して、市議団全員が加入しました。議員からの労働相談の紹介は昨年度4件(前年7件)でしたが、労組や民主団体からの紹介は12件でした。

 CU三多摩の地域における活動を進めるうえでCU三多摩の役割への理解を進め支援や協力を得るために「労働相談などの活動状況」の報告を兼ねた、労働組合、民主団体、市議会議員などとの懇談の取り組みを進めます。そして、定期的な懇談をめざし相互理解を深めます。

 

5、組織活動の強化

(1)地域での組織確立と組合員参加の取り組み

 CU三多摩は地域に根差し、地域運動に対応する組織作りを目指してきました。そして、これまでに多摩稲城と清瀬東久留米の2分会が設立されています。

 地域に分会を設立することは、多くの地域住民の身近にCU三多摩を示すことになります。そして、分会づくりは新たな組合の活動家や役員を作ることになります。

 今年度も現在の2分会活動を前進させることと併せて、新たな地域に根差した新分会設立を目指します。

 

(2)組合員交流と青年・女性参加の取り組み

 地域ユニオンの役割のひとつが非正規で働く女性の組織化です。労働相談の半数は女性であり、非正規雇用も多数は女性です。2019年では男性の非正規率が22.8%に比べ、女性は56.0%と半数以上を占めています(総務省労働力調査)。

 相談・オルグ活動での女性の役割は重要性を高めています。昨年度は女性の役員や相談員を増やすことが出来ませんでしたが、女性の活動家を育成し、女性執行委員を増やします。

 今年度も組合員の声を聴く機会や組合員相互の交流のために、新春のつどい、秋の拡大決起交流会、春の花見などに取り組みます。そして、地域の民主団体などが共同で開催する地域まつりにも積極的に参加し、その地域の組合員に参加を呼び掛けます。多くの組合員がこれらの取り組みに参加することが組合活動を強化します。学習交流活動を強化します。

 

(3)宣伝・ホームページと機関紙活動の一層の強化

 今年度も引き続きホームページの充実と宣伝・機関紙活動強化に取り組みます。ホームページは毎月の更新で労働相談の紹介を最新のものにする必要があり、その点を特に重視して充実したホームページにします。

 宣伝活動は西武線と京王線の2つの線での取り組みが中心になっていますが、中心である立川駅での駅頭宣伝も年に数回取り組みます。

 機関紙「CU三多摩ニュース」の発行は組合員とのつながりを作る重要な活動です。毎月の定期発行、紙面内容を事務局会議で討議することを引き続き行い、充実した紙面づくりを目指します。そして、今年度も全組合員への郵送を本部機関紙も含めて行います。

 

(4)執行委員会などの機関会議の強化

 組合の活動強化には組合員が運動に参加することが重要です。その活動の基本となるものが機関会議です。執行委員会と事務局会議の強化は組合活動を発展させるうえで強く求められています。

 今年度は執行委員が1名増員となっていますが、女性執行委員は現状のままです。年度途中も含めて女性役員の増員に奮闘します。昨年度も相談者に執行委員を要請しましたが、引き続き選出を強めます。同時に、執行委員会の出席率の向上を取り組みます。執行委員会での学習会を充実させる事や会議通知を徹底し参加状況を向上させます。

 学習会では全組合員を対象にしたものは取り組めませんでしたが、今年度は学習交流会として取り組みを計画します。また、事務局会議の増員も引き続き取り組みます。

 

6、CU東京の共済活動

(1)独自共済について

1)入院共済

病気・ケガ入院(交通事故を除く)に対する1日当たりの5,000円の入院見舞金を給付。対象は満69歳まで。

入院見舞金については、支給日数の累計が1共済年度につき、60日を限度とする。但し、1共済年度に60日間の給付を受けた翌年の支給は30日を限度とする。

満65歳以降に発生した支給日数の累計は1共済年度につき、30日を限度とする。

 

2)慶弔共済について

2014年4月1日より、「慶弔規程」を実施しています。

共済資格のある組合員に対して以下の給付を行う

①組合員本人に対する結婚祝い金について

組合員が結婚(法律上)した場合、結婚祝い金として1万円を給付する。給付は支部の申請に基づいてCU東京が支部に対して行う。給付は一人1回とする。

②組合員本人が死亡した場合

支部が香典として3万円を支出し、支部の申請に基づいて本部から支部に支払う。

③出産祝い金 (2017年5月26日から実施)

組合員の出産に、祝い金1万円を給付する。

 

3)組合活動事故見舞金について

CU東京本部、支部の機関決定による組合活動、行事などに参加した組合員と家族の事故に対して以下の見舞金を給付します。(2017年7月1日から実施)

  死亡事故5万円(3万円)

  10日以上の入院及び後遺障害3万円(1万円)

  10日未満の入院、3日以上の実通院1万円(5千円) ( )は家族 

 

(2)全労連共済などの普及と加入

1)交通災害共済の全組合員2口(100円)加入を継続します。

入院3千円、実通院千円、死亡100万円などの給付、年齢制限なし

事故の公的機関証明、通院の医師の診断、事由発生時から30日以内の報告、3か月以内の給付申請などは継続します。

2)個人加入共済、自転車保険の普及に取り組みます。

 今年度もCU三多摩として、東京労働共済会の自転車保険や介護補償などの制度活用を呼び掛けます。

 

(3)福利厚生事業(東京デズニーリゾートの利用補助)

東京デズニ―リゾート利用券(補助金額1,000円)のサービスをCU東京組合員、家族に提供します。利用券は、組合員一人年間5枚を上限とします。

 

7、財政活動について

(1)基金作りなど安定した財政の確立の取り組み

 今年度も訴訟対策基金に10万円を引当金としました。今年度も安定した財政確立を行う上で組合費口座振替手続きを徹底します。現金納入者には口座振替に切り替えるように呼び掛けます。

 今回の予算では分担金について、八王子合同法律事務所の顧問料を3万円に引き上げます。事務所の家賃は今年4月から3万円の定額に変更されています。

 解決金のカンパについては、解決金の10%を基準に要請しています。

 

(2)組合費の内訳

①70歳未満の一般組合員の組合費(2000円)の内訳。

組合費1000円(支部組合費500円)、共済費1000円(入院、交通・労働組合事故見舞の共済、慶弔、福利厚生、事務費などを含む)となります。

②70歳以上の組合員及び協力組合員(二重加盟等)の組合費は1000円です。支部組合費500円、本部組合費300円です。共済費は交通共済、慶弔費、福利厚生、事務費等200円です。入院共済はありません。

 

(3)現在のCU三多摩の財政補助について

現在のCU三多摩財政補助は、以下の通りとなっています。

①執行委員会と事務局会議に対して交通費と会議手当て合計2000円支給する。

②団体交渉については、交通費実費と打合せ費用として1000円を加えて支給する。

③定期大会参加者への会議手当て、1000円を支給する。

④分会への補助金として、月1人当たり100円支給する。